何が起きたか
カナダのケープブレトン島出身、ジュノー賞受賞フィドラーのAshley MacIsaacさんがGoogleを相手取り150万ドル(約2億円)の損害賠償訴訟を提起しました。
理由はシンプルで恐ろしい。Googleの「AI Overview」が彼を性犯罪者と誤って表示したのです。
経緯
- 2025年12月: ノバスコシア州の先住民コミュニティ(Sipekne’katik First Nation)がMacIsaacさんの公演をキャンセル。理由は「GoogleのAI Overviewで性犯罪者と出たから」
- AI Overviewは彼が「性的暴行、児童へのインターネット誘惑、身体危害暴行の有罪判決を受け、性犯罪者登録簿に登録されている」と表示していた
- 全て事実無根。同姓の別人が性犯罪者だった可能性が高い
- コミュニティは後に謝罪したが、MacIsaacさんは「ステージに立つのが怖い」と語っている
- 2026年2月: オンタリオ高等裁判所に提訴
- 2026年5月4日: 訴訟が報道され大きく注目を集める
なぜ重要か
これは「AIハルシネーションによる名誉毀損」が実際の法廷に届いた最初の大型事例です。
これまでAIの誤情報は「笑い話」や「技術的な問題」で済まされてきました。でも今回は:
- ❌ 実際の仕事を失った(公演キャンセル)
- ❌ 名誉が傷ついた(性犯罪者というレッテル)
- ❌ 心理的被害が深刻(「どれくらい尾を引くか分からない」)
AIの誤出力がリアルな人間の人生を壊す — これが現実になりました。
Googleの対応は不十分
Google Canadaは「AI概要は頻繁に更新され、誤りは改善に活かされる」という声明を出したのみ。MacIsaacさんへの直接の謝罪や訂正はなかったと訴状に記されています。
「改善に活かされます」で済む問題じゃないですよね。名前を検索されたら性犯罪者と出る状態が数週間続いたかもしれない。その間の損失は誰が補償するのか。
AI業界への影響
この裁判の行方次第で、AI企業の責任範囲が大きく変わる可能性があります:
- AI出力を「出版物」とみなすか — なら名誉毀損法が直接適用される
- セクション230的な免責が適用されるか — 「プラットフォームだから責任ない」で通るかどうか
- 損害賠償の前例 — 150万ドルが認められれば、今後のAI誤情報訴訟の基準になる
まとめ
AI Overviewに限らず、ChatGPT、Perplexity、その他のAI検索ツールは全てハルシネーションを起こします。「AIが言ってたから」と情報を鵜呑みにする時代は、もう終わりにしないと。
MacIsaacさんの場合、たまたま有名だったから訴訟できた。名もない一般人が同じ目に遭ったら? — その救済策がまだないのが現実です。
この裁判は、AI時代の「情報の責任」を決める重要な一歩になるでしょう。