2026年8月1日、DeepSeekは「V4 Flash 0731」の正式リリースを発表しました。284BパラメータのMoEモデル(有効13B)で、エージェントベンチマークでなんと自分より6倍大きいV4-Pro-Previewを打ち負かしたのです。
何が起きたか
DeepSeekの公式チェンジログによると、V4 Flash 0731は7月31日にプレビューを卒業し正式リリースされました。注目のベンチマーク結果は以下の通り:
- Terminal-Bench 2.1: 82.7(プレビュー時は61.8、V4-Pro-Previewは72.1)
- NL2Repo: 54.2
- Cybergym: 76.7
- DeepSWE: 54.4
- Toolathlon verified: 70.3
そして価格。公式の価格ページによると:
- 入力(キャッシュミス): $0.14 / 1Mトークン
- 出力: $0.28 / 1Mトークン
- 入力(キャッシュヒット): $0.0028 / 1Mトークン
比較すると分かりやすいです。Claude Sonnet 5が9月から$3/$15/M、GPT-5クラスが数十ドル/Mの時代に、$0.14/MでTerminal-Bench 82.7%のエージェント能力が出せる。これは破格です。
なぜ「小型が大型を超えた」のか
V4 FlashはV4-Pro(1.6Tパラメータ)の「小型版」でした。ところが今回の0731アップデートでは、モデルアーキテクチャとサイズをそのままに、再ポストトレーニング(re-post-training)のみでエージェント性能を劇的に向上させました。
プレビュー時のTerminal-Benchは61.8%。それが82.7%へ。20ポイント以上の改善を、アーキテクチャ変更なしで達成しています。つまり、「モデルを大きくする」以外の向上パスが実証されたわけです。
DeepSeek自身も「V4-Proの正式リリースは追って発表」としており、あえて小型モデルを先に本番投入する戦略を取りました。「十分に訓練された小型モデルの方が、大型モデルより実用上優秀になる」という結果を、自社で証明してみせた形です。
AIの価格競争が終わらない
2026年のAI業界は「レース・トゥ・ゼロ(ゼロへの競争)」が加速しています。
- DeepSeek V4 Flash: $0.14/M(入力)
- Claude Sonnet 5: 9月から$3/M(+50%値上げ)
- Kimi K3: オープンウェイトで実質無料
- GLM-4.7-Flash: 無料枠あり
Anthropicが値上げする一方で、DeepSeekは能力を上げて価格を維持。この価格差は、APIコストを気にする開発者にとって決定的な違いになります。
Codex対応とResponses API
V4 Flashのもう一つの特徴は、OpenAIのResponses API形式をネイティブサポートし、Codex互換である点です。公式ドキュメントでCodex向けの設定ガイドが公開されており、既存のOpenAIエコシステムからの移行が容易になっています。
また、Anthropic APIフォーマットもサポート。1Mコンテキスト長、最大384K出力で、実運用に十分なスペックです。
移行の注意点
旧モデル名(deepseek-chat、deepseek-reasoner)は2026年10月24日に廃止されます。それまでに deepseek-v4-flash への移行が必要です。
なお、DeepSeekは近日中に「ピーク/オフピーク価格制」を導入する予定も発表しています。ピーク時間帯(北京時間9:00-12:00、14:00-18:00)は通常の2倍の価格に。日本時間でも昼〜夕方にあたるので、バッチ処理は時間帯をずらすことでさらにコストを抑えられます。
まとめ:何を読み取るべきか
このリリースから3つのポイントが見えます:
- ポストトレーニングの威力 — アーキテクチャを変えずに20ポイント向上。モデル規模至上主義に一石
- 価格破壊の持続 — $0.14/MでAgent Bench 82.7%は、競合に「なぜもっと安くできないのか」と問いかけている
- 中国AIの追い上げ — DeepSeekは前回のV3でも衝撃を与えましたが、V4 Flashで「安いだけでなく性能も頂点」という立ち位置を確立
個人的に一番興味深いのは「小型モデルが大型を超えた」点です。モデルサイズ≠性能という前提が固まれば、推論コストの観点でAI応用の経済性が根本から変わります。エッジデバイスやローカル運用の可能性も広がるでしょう。
10月24日の移行期限まで、deepseek-chatを使っている方はお早めに。




